はじめての環境DNA
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環境DNAを現場で使う際の注意点

環境DNA技術は、環境中のDNAをろ紙で捕集して検出するという単純なものです。

それでも、いざ技術を使おうと思った際、準備から現地での注意点まで、細かい部分が重要になってきます。

そこでこのページでは、主に建設コンサルタントの方々向けに、技術の特性や、採水してサンプルを送付するまでに注意するべきことをご紹介していきます。
ちなみに、環境DNA分析の相場としては検体あたり3万円~4万円くらいが多いです。

環境DNAの技術特性(メリットとデメリット)

採捕と比較した場合のメリット

  1. かかる労力が少ない、一人でできる
  2. 広域調査が得意(地点あたりのコストが安くつく)
  3. 隠れ潜む種や夜行性の種も検出できる
    →希少種の生息地調査や大量にある支流の網羅的な調査などは
     環境DNAの本領発揮

採捕と比較した場合のデメリット

  1. 偽陰性(いるのにでない)や擬陽性(いないのにでる)がある
  2. 結果が全くでないことがある
    (魚類メタバはあまりないが、それ以外ではよくある)
    →流量が大きい渓流では、魚影が見えても検出できないことがあった
  3. 勉強が大変、論文が英語ばっかり、DNAのイメージがつかない
    →よく使われる論文や技術の説明を記事化していきます

環境DNAで重要な点(全体像)

環境DNAで注意すべき点をリスト化しました。※あくまで個人的な意見です
メタバ:メタバーコーディング、NGSによる網羅的解析のこと
MiFish:魚類のメタバで使うプライマーセットの名前
    12S rRNA領域を対象

環境DNAの注意点(技術特性)

  1. メタバで偽陰性(いるのにでない)、擬陽性(いないのにでる)はよく発生する
  2. 種特異的な検出の場合、擬陽性はほぼないが偽陰性はある
  3. バイオマス推定はとても難しい(採水から分析まで一貫した精度管理が必須)
  4. 亜種などの近縁種はDNAでも分けにくい(MiFishで区別できないことも多い)
  5. 個体数に対して流量が大きいと検出しにくい(雨天時の増水なども影響大)
  6. 排水由来のコンタミがある(おいしそうな魚が多い)
  7. メタバの解像度は、魚類 > 両生類、哺乳類 > 底生動物、貝類というイメージ
  8. 底生動物、貝類は遺伝的なばらつきが大きいからか、属すらわからないものも多い

環境DNAで気を付けること(事前準備編)

使用器具の準備

  1. 採水ビン(ミネラルウォーターの中身を捨てて使う人もいる)
  2. 塩化ベンザルコニウム(オスバン、薬局で購入可能)
  3. RNAlatetr(1.6mLをステリべクスにスポイトで添加)
  4. 使い捨てカップ(ペンキ用のカップが便利)
  5. ステリべクス(0.45μm, 0.22μmどちらでも)
  6. ステリべクス濾過用シリンジ(テルモシリンジが使いやすいです)

採水時

  1. 使い捨て手袋を着用(MiFishでもヒトが検出される)
  2. コンタミを防止する意識(川だと上流側に向けて採水など)
  3. オスバンを使用する場合は確実に入れる(時々忘れて送られて来ます)
  4. ステリべクスのろ過回数をカウントする用のカウンター(ろ過したい量を採水してペリスタポンプでろ過するとカウントしなくていいので便利です)
  5. ステリべクス保存用のRNAlaterを確実に入れる
  6. 1ヶ所ではなく周囲数地点で採水(検出確率が増えます)


送付時

  1. オスバンを添加した水は冷蔵で輸送する(冷凍しない)
  2. サンプル水は可能な限り採水の翌日に到着するようにする
    (分解抑制のため)
  3. ろ過フィルターは冷凍して輸送する
    (分解抑制のため)

思いつくことをあげていきました。
これがすべてではないので、目的のために何をすればよいのかを考えながら作業をすると大きな間違いにはならないと思います。

環境DNAマニュアルや分析を依頼する会社にしっかりと確認を取ってから作業を行ってください!