はじめての環境DNA
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環境DNA使った調査・実験

ヤマトサンショウウオを環境DNAで検出してみた

カエルの卵が観察できる小規模の湿地帯でサンショウウオの卵塊もあるとの情報を聞いて、情報元である会社の人に水をすくってきてもらいました。

採水は急遽決めたのでオスバンは入れず、コンビニで買った1Lのペットボトルに700mLくらい採水して家の冷蔵庫で保存、2日後に会社のろ過機を使ってGF/Fフィルターでろ過しました。

フィルターからのDNA抽出はDNeasy Boold and tissue kitを使っています。具体的には、環境DNAマニュアル2020年4月3日発行 4章-2 グラスファイバーフィルターからの DNA 抽出を少しカスタムした方法です。

ヤマトサンショウウオとは?

魚類以外生物の知識が乏しいので、少し調べてみました。

ヤマトサンショウウオの分布(下記論文より引用)

近畿圏の中緯度地域に分布しているサンショウウオ属(Hynobius)の一種です。2020年現在で40種くらい日本に生息しています。ヤマトサンショウウオ(Hynobius vandenburghi) もごく最近まではカスミサンショウウオ(Hynobius nebulosus)として扱われていましたが、Matsui et al.2018によって分類体系が大きく見直されました。最終的に元々カスミサンショウウオには9種含まれていたと結論づけられています。

サンショウウオは移動範囲が小さく地理的隔離の影響を受けやすく、狭い範囲で遺伝的分化が発生しやすいです。これは地域的に固有な遺伝子を持つ集団や種分化した個体群が形成されやすいということを意味します。

種分化していても見た目では見分けがつかず、発見されない状態になっている種を隠蔽種と呼んだりもします。そして、隠蔽種もしくは個体群を見つけることができる可能性があるのが環境DNAの強みでもあると思います。

分析と解析について

GISと環境DNA分析によるヤマトサンショウウオの未記録個体群の発見

Discovery of an unrecorded population of Yamato salamander (Hynobius vandenburghi) by GIS and eDNA analysis
Sakai et al.2020 (OA)

使ったプライマーとライブラリ調整はこの論文を参考にしました。ターゲットの産物長が大体290bpを平均としていることから、ペアエンドシーケンスするためにMiSeq Reagent 500cycle nano kitをつかって次世代シーケンサーでDNA配列を解読しました。

結果

結果がこんな感じです。解析と種名の割り当てはDADA2→BLASTで行いました。リードが一番多い配列はカスタムデータベースに登録されているヤマトサンショウウオの配列と100%(238/238bp)一致しました。2番目はトウキョウサンショウウオ(Hynobius tokyoensis)、3番目はアベサンショウウオ(Hynobius abei)でした。

MEGA7で樹形図を書くとこんな感じです。サンプルから得られたどの配列もヤマトサンショウウオが集まっている枝に配分されました。

小さな溜池からとってきたサンプルですが、異なるハプロタイプを持つヤマトサンショウウオが付近に生息しているのかもしれません。

成果

今回の成果として、全く知識のない人でもコンビニで買ったペットボトルを使って環境DNAで気軽に生物を検出できることが分かりました。これなら小・中の夏休みの自由研究に使えそうですね。学校の先生一緒にいかがでしょうか?お問い合わせ頂ければ前向きな相談ができると思います。

またこれは分析には関係ありませんが、サンショウウオ類をやるに伴って、とても愛に溢れた本を買いました。写真が沢山載っててすごいです。クラウドファンディングを募って採用されたものとのことで、とても力が入っています。ぜひ買ってみてください。

画像はジャーナルのCC BYに従う形で、記事で紹介したオープンアクセスの論文中の画像または、自身で作成したものを使用しています。

最後にご協力いただいた皆様にお礼申し上げます。@しばた

出典

  • 環境DNAの抽出(環境DNA学会マニュアル)
    Minamoto, Miya, Sado, Seino, Doi, Kondoh, Nakamura, Takahara, Yamamoto, Yamanaka, Araki, Iwasaki, Kasai, Masuda & Uchii (2021) An illustrated manual for environmental DNA research: water sampling guidelines and experimental protocols. Environmental DNA 3: 8-13, https://doi.org/10.1002/edn3.121
  • Hynobius属の網羅的な検出系について
    Sakai, Y., Kusakabe, A., Tsuchida, K., Tsuzuku, Y., Okada, S., Kitamura, T., ... & Minamoto, T. (2019). Discovery of an unrecorded population of Yamato salamander (Hynobius vandenburghi) by GIS and eDNA analysis. Environmental DNA1(3), 281-289.
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