はじめての環境DNA
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環境DNA使った調査・実験

メタバーコーディングプライマー

環境DNAで使われているメタバーコーディングプライマーを中心にまとめました。
基本的にMi ~と名の付くプライマーはMiseqの150PEで解読できるようになっているそうです。

魚類 (Osteichthyes, Chondrichthyes, Cyclostomata)

プライマー名配列 (5’→3′)出典
MiFish-U-F
(硬骨魚類)
GTCGGTAAAACTCGTGCCAGCMiya et al. 2015
MiFish-U-R
(硬骨魚類)
CATAGTGGGGTATCTAATCCCAGTTTG Miya et al. 2015
MiFish-Ev2-F
(軟骨魚類)
RGTTGGTAAATCTCGTGCCAGC環境DNA
マニュアル
MiFish-Ev2-R
(軟骨魚類)
GCATAGTGGGGTATCTAATCCTAGTTTG環境DNA
マニュアル
MiFish-U2-F
(アナハゼ類)
GCCGGTAAAACTCGTGCCAGC環境DNA
マニュアル
MiFish-U2-R
(アナハゼ類)
CATAGGAGGGTGTCTAATCCCCGTTTG環境DNA
マニュアル
MiFish-L-F
(ヤツメウナギ類)
GCTGGTAAACCTCGTGCCAGC環境DNA手順書
MiFish-L-R
(ヤツメウナギ類)
CATAGCGGGGTATCTAATCCCGGTTTG環境DNA手順書
海域であればUとEv2, U2は混合して使用する。ヤツメウナギなどの円口類が生息している場合Lも混合して用いる。

U, Ev2, U2を混合して使用する場合は環境DNAマニュアルの比率を参考に2:1:1で混合する。

また、アユ(Plecoglossus altivelis altivelis)がバイオマスに対して、環境DNAメタバーコーディングの結果が合わない場合があるといった声を多く聞きます。

絶妙な位置にある数点ミスマッチが原因なような気がします。アユのプライマーを作って入れてもいいでしょう。

甲殻類 (Decapoda)

プライマー名配列 (5’→3′)出典
MiDeca-FGGACGATAAGACCCTATAAAKomai et al.2019
MiDeca-RACGCTGTTATCCCTAAAGTKomai et al.2019

甲殻類というより十脚目用のユニバーサルプライマーです。現状のデータベースの状態で、メタバーコーディングをすると種まで落ちない配列が多い印象です。ですが、令和2年度戦略的研究開発課題で無脊椎動物の基盤データ整備が挙げられているので、甲殻類についても近いうちに解像度が上がるかもしれません。

哺乳類 (Mammalia)

プライマー名配列 (5’→3′)出典
MiMammal-U-FGGGTTGGTAAATTTCGTGCCAGC Ushio et al.2016
MiMammal-U-RCATAGTGGGGTATCTAATCCCAGTTTGUshio et al.2016
MiMammal-E-F
(象)
GGACTGGTCAATTTCGTGCCAGCUshio et al.2016
MiMammal-E-R
(象)
CATAGTGAGGTATCTAATCTCAGTTTGUshio et al.2016
MiMammal-B-F
(熊)
GGGTTGGTTAATTTCGTGCCAGC Ushio et al.2016
MiMammal-B-R
(熊)
CATAGTGGGGTATCTAATCCCAGTTTG Ushio et al.2016

陸上に生息する哺乳類を水から検出するといったアプローチで種を検出します。最近は夜行性の哺乳類であるカワネズミ(Chimarrogale platycephalus)の検出に用いられたりもしています。ただ、哺乳類を対象としているので、ヒトのコンタミネーションにはより一層の注意が必要。

鳥類 (Aves, Bird)

プライマー名配列 (5’→3′)出典
MiBird-U-FGGGTTGGTAAATCTTGTGCCAGCUshio et al.2018
MiBird-U-RCATAGTGGGGTATCTAATCCCAGTTTGUshio et al.2018
超可変領域長 約171bp

水鳥などの鳥類相の調査に用いたりします。鳥類が少ないとヒトが増えたり魚類が増えたりする場合があります。

プライマー名配列 (5’→3′)出典
BirT-FYGGTAAATCYTGTGCCAGCThalinger eta. 2023 preprint
BirT-RAAGTCCTTAGAGTTTYAAGCGTTThalinger eta. 2023 preprint
超可変領域長 約276 (319-43) bp

プレプリントなのでポテンシャルは未知だが、割と良さげな印象。

水棲昆虫 (Insecta, Water invertebrate)

プライマー名配列 (5’→3′)出典
LCO1490GGTCAACAAATCATAAAGATATTGGFolmer et al.1994
Uchida et al.2020
HCO2198TAAACTTCAGGGTGACCAAAAAATCAFolmer et al.1994
Uchida et al.2020
Illuminaシーケンサーなら600cycle (300PE) のカートリッジでシーケンス
  1. Uchida et al.2020に記載のLCO1490-HCO2198 (Folmer et al.1994) のプライマーセットは増幅産物長がMiseqの最大可読長である600bpを上回っているため、フォワード側とリバース側の配列を解析時にマージできないことに注意して使用する。
  2. Uchida et al.2020に記載のLCO1490はFolmer et al.1994に記載の配列と異なるため原著論文を要確認。
プライマー名配列 (5’→3′)出典
fwhF2GGDACWGGWTGAACWGTWTAYCCHCCVamos et al2017
EPTDr2nCAAACAAATARDGGTATTCGDTYLeese et al.2020
Illuminaシーケンサーなら300cycle (150PE) の以上のカートリッジでシーケンス
  1. fwhF2-EPTDr2nのプライマーセットは日本で使用する場合、目的とする分類群が増幅するかどうか確認してから使用することを推奨する。
  2. EPTDは指標生物であるカゲロウ目(Ephemeroptera), カワゲラ目(Plecoptera), トビケラ目(Trichoptera), ハエ目(Diptera)の略。

過去に検証して見た結果、カゲロウ目の種やユスリカがかなり優先して検出された。

プライマー名配列 (5’→3′)出典
MtInsects-16S_FGGACGAGAAGACCCTWTAGATakenaka et al.2023a (開発論文)
Takenaka et al.2023b (環境DNA適用プレプリ)
MtInsects-16S_RATCCAACATCGAGGTCGCAATakenaka et al.2023a (開発論文)
Takenaka et al.2023b (環境DNA適用プレプリ)
Illuminaシーケンサーなら300cycle (150PE) の以上のカートリッジでシーケンス
  1. 対象が昆虫であるため、同じ地点でfwhF2-EPTDr2nと同時に使用すると異なる水生昆虫相が得られる。現状並列して使用するのがおすすめ。
  2. オイカワ増幅する。

どちらのバーコーディングプライマーもトンボ目が増幅されづらい。

菌叢 (Bacteria)

プライマー名配列 (5’→3′)出典
341FCCTACGGGAGGCAGCAG
515FGTGCCAGCMGCCGCGGTAA
806RGGACATACHVGGGTWTCTAAT 
341F-806はV3-V4領域を、515F-806RはV4領域を増幅

サンショウウオ類 -サンショウウオ属 – (Hynobius)

プライマー名配列 (5’→3′)出典
Hynobius_12S_F1TTAATAAAAACGGCCTAAAGCGTGSakai_et_al.2019
Hynobius_12S_R1TCAATTATAGAACAGGCTCCTCTAGGGSakai_et_al.2019
Illuminaシーケンサーなら500cycleの以上のカートリッジでシーケンス

ウナギ属 (Anguilla)

プライマー名配列 (5’→3′)出典
MiEel-FCTTACAGCAAACCTGACAGCAGTakeuchi et al.2019
MiEel-RTTGGTGTGCCATTATACGTTTTCTTGTakeuchi et al.2019

両生類 (Amphibia)

プライマー名配列(5’→3′)出典
Amph_16S_1070FACGAGAAGACCCYRTGGARCTTSakata et al.2022
Amph_16S_1340RATCCAACATCGAGGTCGTAASakata et al.2022
  1. 論文中のプライマー作成の部分に、InSilicoで魚類・哺乳類・鳥類の増幅が考えられる旨の記載があるため、両生類以外の生物種が同所的に生息しておりバイオマス量の偏りが大きい場合には、データ量を多く取得しないとバイオマス量の少ない両生類が検出されない可能性あり

棘皮動物 – クモヒトデ綱 – (Ophiuroidea : 16SOph1, Echinodermata : 16SOph2)

プライマー名配列 (5’→3′)出典
16SOph1-FGTACTCTGACYGTGCAAAGGTAGCOkanishi et al.2023
16SOph1-RTAGGGACAACACGTCCCRCTOkanishi et al.2023
16SOph2-FGGACGAGAAGACCCYRTWGAGOkanishi et al.2023
16SOph2-RCAACATCGAGGTCGCAAACOkanishi et al.2023
Illuminaシーケンサーなら300cycleの以上のカートリッジでシーケンス

イシサンゴ目- (Scleractinian)

プライマー名配列 (5’→3′)出典
Scle_12S_FwCCAGCMGACGCGGTRANACTTAShinzato et al.2021 (開発)
Nishitsuji etal.2023 (実証研究)
Scle_12S_RvAAWTTGACGACGGCCATGC-Shinzato et al.2021 (開発)
Nishitsuji etal.2023 (実証研究)
産物長 366~465bpなので、Illuminaシーケンサーなら600cycleのカートリッジでシーケンス

ハプロタイプ検出用プライマー

特定の種内多型を環境DNA分析で検出するためのプライマーセット

アユ (Plecoglossus altivelis altivelis)

プライマー名配列 (5’→3′)出典
PaaDlp-2_FCCGGTTGCATATATGGACCTATTACTsuji et al.2020 (開発)
Tusji et al.2022 (実証研究)
PaaDlp-2_RGCTATTRTAGTCTGGTAACGCAAGTsuji et al.2020 (開発)
Tusji et al.2022 (実証研究)
増幅領域長は215bpなので、Illuminaシーケンサーなら150PE 300cycle以上のカートリッジでシーケンス。対処領域はmtDNA D-loop。

ドンコ属 (Odontobutis obscura, O. hikimius)

既存のドンコ2種を含む複数系統を増幅するプライマー

プライマー名配列 (5’→3′)出典
Odon_12S primer-FTATACGAGAGGCTCAAGCTGATTsuji etal.2023 (原著)
Tusji etal.2023 (プレプリ)
Odon_12S primer-RGTTTTACCAGTTTTGCTTACTATGGTsuji etal.2023 (原著)
Tusji etal.2023 (プレプリ)
増幅領域長は370bpなので、Illuminaシーケンサーなら250PE 500cycle以上のカートリッジでシーケンス。対処領域はmtDNA 12s rRNA。

カワムツ, ヌマムツ, オイカワ (Nipponocypris temminckii, N. sieboldii, Zacco platypus)

オイカワ, カワムツ, ヌマムツの系統を増幅するプライマー (ハスが増えるので注意)

NipZac_D-loop primer-FACTATCTTCTGATAGTAACCTATATGGTATsuji etal.2023 (原著)
Tusji etal.2023 (プレプリ)
NipZac_D-loop primer-RGTGTCCCTGATTCTATCATGAATAGTsuji etal.2023 (原著)
Tusji etal.2023 (プレプリ)
増幅領域長は270bpなので、Illuminaシーケンサーなら250PE 500cycle以上のカートリッジでシーケンス。対処領域はmtDNA D-loop。

Opsariichthys uncirostrisを増幅する

プライマーの確認等に使うもの

プライマーが対象分類群・種のDNAを増幅するかの確認

  • rDoAMP(https://github.com/ong8181/rDoAMP)

随時追加していきます。

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プライマー配列は一度primer blastして期待する分類群を増幅するか、期待しない分類群を増幅していないか確認しましょう。

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